代表者挨拶

小脳と小脳障害・疾患に関心のある全ての皆さまへ

近年、アルツハイマー病をはじめとする中枢神経系の特定の部位の神経細胞が変性、脱落していく難病である神経変性疾患の進行を抑制する本格的な治療開発が進められ、大きな注目を集めています。一方、中枢神経系の中でも小脳は大脳の1/10程の大きさしかありませんが、その表面積は大脳の半分以上とされ、神経細胞の数は大脳より多く,脳細胞の約80%を占めるとも言われています。小脳を病変の主座とする主要な疾患である脊髄小脳変性症は、一般的な知名度はそれほど高くないものの、代表的な神経変性疾患の一つであり、同様に本格的な治療開発が進められています。

脊髄小脳変性症では、小脳の機能に対応した症状としての運動失調(ふらつき)に加え、眼球運動の障害、錐体外路系障害(パーキンソン症状など)、自律神経症状、末梢神経障害など多彩な症状を示すことがあります。最近では、小脳に限局した障害でも、遂行機能・言語・空間認知障害,情動障害といった大脳の障害として知られる症状が出現しうることも明らかになってきました。すなわち、小脳と大脳は、互いに入力と出力により情報処理を行うことで、私たちの脳を健全な状態に保っています。この複雑な小脳システムの解明、そして小脳疾患の原因遺伝子同定、病態解明、およびリハビリテーションを含む治療開発研究には、多くの日本人研究者が世界的な成果を挙げてきました。

本学会の前身は2011年1月に設立された小脳研究会であり、初代理事長の水澤英洋先生のご尽力により、2021年3月、日本小脳学会として発足し、2022年4月からは第二代理事長の佐々木秀直先生のご指導の下、発展して参りました。2024年4月より私が後任を務めさせていただくことになりました。

日本小脳学会は、まだ発足後3年と若い学会ですが、小脳を研究対象とする基礎研究者、臨床研究者が最新の知見と課題を共有しながら、日本の小脳研究をさらに発展させていくことを目的としています。神経変性のメカニズム解明とその抑止は、21世紀の医学の最大の課題の一つであり、小脳研究はまさにその一翼を担っています。

基礎、臨床、職種を問わず、多くの方に、この学会の趣旨にご賛同いただき、その力を結集して小脳疾患の克服へ向けて前に進めればと考えております。皆様のご支援を頂けましたら幸いです。

2024年4月吉日

田中 章景
横浜市立大学大学院医学研究科
神経内科学・脳卒中医学 主任教授

歴代代表者

佐々木 秀直 (2022.4 ー 2024.3)

社会福祉法人函館厚生院函館中央病院 名誉臨床顧問

略歴:1978年北海道大学医学部卒。2003年北海道大学神経内科教授、2016年北海道大学特任教授、 2016年北海道大学名誉教授、2019年函館中央病院名誉臨床顧問。2011-13年厚労省・運動失調症代表、2005-16年日本神経学会理事、2008-18年日本神経治療学会理事 、2022-24年日本小脳学会理事長を歴任。

挨拶文【PDF】

 

 

水澤 英洋 (2011.1 ー 2022.3)

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐、名誉理事長

略歴:1976年東大医学部卒。1996年東京医歯大神経内科教授、2008年脳統合機能研究センター長、病院副院長、2011年医学科長、2014年4月国立精神・神経医療研究センター理事・病院長、2016年4月同センター理事長、2021年4月同センター理事長特任補佐・名誉理事長。2010-14年日本神経学会代表理事、2017年第23回世界神経学会議会長。この間、文科省・脳科学戦略推進プログラム_生涯健康脳、厚労省・プリオン病、運動失調症、難病ゲノム医療推進、AMED・未診断疾患イニシャチブなどの代表を歴任。

挨拶文【PDF】

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